ADSLとは?
ADSLとは、「Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称ディジタル加入者線)」※1の略で、敷設された電話回線を流用して通信ができるインターネット回線です。
日本では2000年代前半に普及が始まりました。ADSLは、電話回線を使用するため、日本全国で通信が利用できます。
現在は、モバイル回線のホームルーターやモバイルWiFiルーター、光回線の登場によりADSLの利用者は減少しています。
また、ADSLのサービス事業者は新規受付を停止し、サービス終了も発表しています。詳しくは後述します。

ADSL回線と光回線の違い
ADSL回線と光回線には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、回線の種類、通信速度、安定性、通信費などから、2つの回線を比べてみます。
- 線の種類:電話回線
- 通信速度:上り~5Mbps、下り~50Mbps
- 通信の安定性:アナログ回線のため不安定な場合あり
- 回線の種類:光ファイバー
- 通信速度:上り~1Gbps、下り~2Gbps
- 通信の安定性:一定して安定している
- ※通信費は「フレッツ・ADSL」と「フレッツ光」の2022年10月時点での月額利用料です。
回線の種類
ADSL回線は、一般の電話回線を利用して通信を行います。メタルケーブルを使用し、電気信号によってデータをやりとりするため、NTT基地局からの距離に応じて、通信速度が変わってしまうというデメリットがあります。
対して光回線は、「光ファイバー」と呼ばれる伝送路(光回線)を利用して、データを送受信します。光信号であるため、電気信号に比べて通信速度は格段に速く、安定していることが特徴です。
通信速度
ADSL回線の通信速度は、上り最大~5Mbps※、下り最大~50Mbps※。光回線の通信速度は、上り最大~1Gbps※、下り最大~2Gbps※です。
Webサイトの閲覧や動画視聴に必要な下り最大速度で比べると、ADSL回線の50Mbps※に対して、光回線は2Gbps※(2000Mbps※)となり、約40倍の速さになります。
- ※ベストエフォート型サービスです。
通信の安定性
ADSL回線はメタルケーブルを使用しているため、電磁波などノイズや、外部からの干渉を受けやすく、通信が不安定です。
一方、光回線で使用されている光ファイバーは、電磁波などノイズの影響を受けにくく、通信が非常に安定しています。
そのため、大容量のデータのやりとりや、動画の視聴なども、ストレスなく行うことができます。
通信費
料金プランによっても異なりますが、一般的にADSL回線は光回線よりも、通信費が安いといわれています。
一例として、NTT東日本の「フレッツ・ADSL」と「フレッツ光」の月額利用料を比べてみます。
「フレッツ・ADSL」は、電話共用型で1,760円~3,080円、ADSL専用型で3,245円~5,555円となっています。
「フレッツ光」は、戸建て向けで3,080円~6,380円、集合住宅向けで2,200円~6,050円です。(2022年9月時点)
なお、いずれも別途プロバイダーサービスの利用料がかかります。
また、ADSL回線は2006年以降、加入者数が減少に転じ年々縮小傾向にありました。
通信に必要な設備の保守管理を維持していくことが難しい状況になり、モデムなどの接続機器の製造も終了していることから、サービス事業者ではすでに新規加入の停止を行っています。
ADSLと光回線の仕組み
ADSLと光回線はどちらも有線の回線ですが、初期費用や訪問工事の有無など異なる部分があります。ADSLと光回線の仕組みについてそれぞれ解説します。
ADSL回線の仕組み
ADSLは多くの家庭に備えられている電話回線を利用します。そのため、特殊な訪問工事などの必要がなく、初期費用を安く抑えられます。
回線事業者(図:契約①)からADSLモデム、スプリッタが提供されるため、モジュラージャックにスプリッタをつなぎ、電話機とADSLモデムを接続し、お手元のパソコンとモデムを接続すればネットへ接続できます。
ただし、ネットの接続時には別途プロバイダーとの契約(図:契約②)が必要です。

光回線の仕組み
光回線を利用する際には、まずは最寄りの電柱から、光回線(光ファイバーケーブル)を屋内に引き込む必要があります。
そのため、戸建て住宅では工事を要する場合が少なくありません。一方、マンションなど集合住宅では、すでに工事が済んでいるところもあります。
屋内では、部屋の壁などに光コンセントを設置します。光コンセントは、光回線と回線事業者から提供される通信機器を接続するためのものです。
通信機器には、ONU(光回線終端装置)や、HGW(ホームゲートウェイ)などがあります。
光回線を使用するための工事は、これで終了です。プロバイダーとの契約が別途完了すれば、ネットに接続ができます。
ADSLと光回線の見分け方
現在使用している回線が、ADSLなのか光回線なのか、わからないという方もいるでしょう。見分け方としては、回線への接続方法を見てみるか、契約書類で確認します。

回線への接続方法で確認する
自宅でネット接続ができている場合、必ず通信機器があるはずです。
お使いのパソコンとモジュラージャックの間に「ADSL」と書かれたモデムがあれば、ADSL回線を使用しているということです。
モジュラージャックとは、電話機やLANなどの接続に用いるコネクタのことで、通常は壁に埋め込まれ、モジュラープラグという端子専用のコネクタを挿して使用します。
ADSL回線では、モデムとモジュラージャックのほかに、スプリッタと呼ばれるマッチ箱より少し大きめの機器を使用しています。スプリッタは、電話用の音声信号と通信用のデジタル信号を分けるための分配器です。
次に、光回線の場合です。光回線では、光ファイバーを自宅内の光コンセントに引き込み、通信機器につなげると、ネットなどが使用できます。
光信号をデジタル信号に変換する必要があるため、ONU(光回線終端装置)や、HGW(ホームゲートウェイ)といった通信機器を使用します。
自宅にある機器がADSLのモデムなのか、光回線のONUやHGWなのかを、確認してみましょう。
契約書類で確認する
もうひとつの方法は、回線を契約した際の契約書類を確認することです。
契約書には、回線の業者名とサービス名が記載されています。通信の種類がADSLの場合は「ADSL」と記載され、光回線を使用している場合は「FTTHサービス」と記載されています。