インタビュー 2016/12/12
UQモバイルは10月24日の発表会で、5分以内の国内通話が何度でも無料の「おしゃべりプラン」を発表しました。そこで今回は、「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」「おしゃべりプラン」という3つのプランがなぜできたのか、「SNSデータ消費ゼロ」はどうやって生まれたのかなど、UQモバイルの料金サービスについて、UQコミュニケーションズ企画部門 事業企画部長の廣井功一に話を聞きました。
UQコミュニケーションズ企画部門 事業企画部長 廣井功一
――本日は、UQモバイルの料金プランがどのようにして決められているのか、お聞きしたいと思います。はじめに、料金プラン検討の流れについて教えてください。
廣井:大きく2つの視点で考えています。まず1つは、お客様のニーズに即しているかどうか。市場調査、店頭でのお客様の声、ブログやツイッターなどに書かれているご意見を集めてニーズを分析し、それにこたえられるサービスと料金を出していくということですね。
そして2つめが、設備の状況です。お客様のニーズを叶えるサービスを、求められる料金で、我々が用意できる設備やシステムが提供できるかどうか、性能やコストの面から検討します。ニーズと設備、両方の断面から合わせて、できるだけニーズにこたえるサービスと料金を提供していく、というのが大枠になります。
――設備というのはどのようなものなのでしょうか。
廣井:我々がサービスを提供するための設備は、「ネットワーク」「コア設備」「情報システム」の3つに分けられます。ネットワーク設備はスマホと通信する基地局と、基地局から我々のコア設備まで音声やデータを送る回線で、これはMVNOとしてauの設備をKDDIから借りています。コア設備は弊社が運用しており、お客様ごとのデータ通信量の制御や、節約モード・高速モードの切り替えを行っています。情報システムはお客様ごとの料金やプランの管理、加入手続きなどを扱う一連の流れを扱います。これらを組み合わせて、提供プランをつくります。
――UQモバイルがサービスを開始したときの「データ高速プラン」と「データ無制限プラン」は、「格安スマホ」らしいシンプルに安いデータ通信+30秒20円の通話料金でした。それが、2015年10月1日にUQコミュニケーションズとKVE(KDDIバリューイネイブラー)が合併してからわずか4カ月で、無料通話がついた「ぴったりプラン」「たっぷりプラン※」を発表されましたが、お客様のどんなニーズにこたえたプランだったのでしょうか。
※発表時は「ぴったりプラン たっぷりオプション」という名称。その後「たっぷりプラン」に名称変更
廣井:弊社はauのネットワークを借りています。当時、auのネットワークはauのスマホしか使えなかったので、ドコモやソフトバンクや、あるいはほかのドコモ系のMVNOを利用されているお客様がUQモバイルを使おうと思うと、SIMを替えるだけではダメで、スマホを新しく買う必要がありました。
MNO3社(ドコモ、ソフトバンク、au)は、スマホの購入と一緒に回線の契約をするのが普通ですし、ドコモ系のMVNOなら、ドコモのスマホをそのまま使えます。「SIMの契約とスマホを別々にご用意ください」といっても、一般のお客様にはどうすればいいかわからないですよね。お客様のことを考えると、SIMを契約するときにスマホもワンストップで買えるようにしなくては、というのが大前提にありました。
――まずはスマホとSIMを一緒に買えるプランに、ということからスタートしたわけですね。それがなぜ「30分/60分まで通話無料」につながったのでしょうか。
廣井:当時のお客様からは、「MVNOは本当に安心して利用できるのか?」という声をいただいていました。ドコモ、ソフトバンク、auは高いけれど安心感、信頼感はある。MVNOは安いけれど本当に変えて大丈夫なのか? という不安を持たれていたんですね。
どうすれば信頼していただけるか考えながら料金プランを見直したとき、1つ、目についたのが通話料金でした。ご指摘の通り、当時は完全従量制でのご提供だったのですが、実際にどのくらい通話を使われるのか調べてみると、通話は月30分以内という方が8割以上でした。月60分以内にまで広げると9.5割もの方がおさまります。であれば、その分の通話も月額料金のなかに含めてしまい、「スマホも通話も、お客様にぴったりな条件」の料金プランにした方がわかりやすく、安心していただけると考えました。
※2016年8月 UQコミュニケーションズによるインターネット調査(UQ mobileユーザー4,145名からの回答)
こうして、「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」が生まれました。詳しい方であれば、使い方に合わせたプランをご自身で選んで契約していただけますが、「ワンストップで我々に任せてもらえれば大丈夫、安心してください」というコンセプトのプランをつくりたかったのです。
――その後、「SNSデータ消費ゼロ」を打ち出されましたよね。それはどのような意図があったのですか?
廣井:「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」を検討したときに感じたのが、スマホになってコミュニケーションのかたちが変わってきたということでした。
――変わってきた、というと?
廣井:ビジネスの場合は別として、普通のお客様のコミュニケーションは、音声通話からSNSなどに比重が移っているということです。電話で「もしもし/はいはい」するよりは、LINEなどのコミュニケーションアプリを使われています。
そうであれば、音声についてはお客様が求める無料通話を含めたうえで、データ通信では「安心してSNSなどでコミュニケーションを楽しみたい」というニーズを満たすプランをご提供したい。その結論が、「節約モードならSNSをいくら使ってもデータ消費ゼロ」というコンセプトでした。
――音声ではなくデータで特徴を打ち出したというわけですね。
廣井:弊社はこれまで、データ専業としてWiMAXの「モバイルルーター」を提供していました。その経験から、お客様のコミュニケーションが通話からSNSに変わってきているということはわかっていました。そのような環境下で弊社の特徴を出せるのは、音声よりもデータを重視したサービスかな、という、そこには我々の思想が入っています。
多くのお客様が求めているものはなにか、シンプルに考えると「安い料金で、そこそこの音声+安心して使えるSNS」で事足りるのではないか。あとは高画質の動画等もありますが、そこまでカバーするにはデータ量を増やさなければならない。すべてを盛り込むと、お客様の求める「安い料金」ではご提供できなくなってしまいます。それらのバランスを考えながら、今の「ぴったりプラン」の条件を決めました。
お客様へのアンケートでも、UQモバイルを選んでいただいた理由として「SNSデータ消費ゼロに魅力を感じた」は上位に挙がりますので、多くのお客様から評価いただいているのだと思います。
――300kbpsという速度はどうして決められたのですか。
廣井:高速モードと低速モードを切り替えて、低速モードならデータ消費ゼロというサービスは他社でも提供されています。ほとんどは上限200kbpsまでなのですが、実験してみると200kbpsではぶつぶつ切れたり、微妙にストレスを感じるサービスもありました。我々は社内で少しずつ速度を上げながらいろいろな場所でメジャーなサービスを実際に試し、スループットを測定して、「300kbpsなら、動画を除けばほぼストレスなく使えて、なおかつ提供も可能」だということで、決めました。
→「節約モード(送受信最大300kbps)で、どこまでできるか検証してみた」
――「SNSデータ消費ゼロ」といいながら、SNS以外にも音楽ストリーミングや、最近だと「ポケモンGO」までデータ消費ゼロで使える。という声を聞いています。
廣井:いちばんお客様が使いたいのがSNSだろうということで、「SNSデータ消費ゼロ」をキャッチコピーとしてうたっていますが、実際は対応アプリを区別しているわけではないので、SNS以外にも音楽ストリーミングや、ネットサーフィン等も節約モードで利用することができます。
――節約モードで利用できる目安等はあるのでしょうか?
廣井:実際に300kbpsのスループットで使って問題ないかを社内でチェックして、使えれば「利用できそうです」とご案内しています。「ポケモンGO」は、あれだけ海外で話題になったものなので、日本でのサービス開始後すぐに実際に試してみました。その結果、問題なかったので速報としてFacebookで「試してみた」動画を公開しました。
基本的な考え方は、「アプリによって使えるものと使えないものを区別する」のではなく、300kbpsというスループットで快適に使えるものは使えます、というものです。
アプリを識別して扱いを変えるためにはどうしても「通信の秘密」や、「ネットワークの中立性」の問題は避けて通れませんが、このやり方であればまったくそれは関係ないですから。どちらのやり方が正しいとか間違っている、という話ではなく、UQモバイルはそういう考え方でサービスを提供しています。
――先日発表された「おしゃべりプラン」は、「5分以内の国内通話が何度でも無料」という、これまでの「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」とはまったく違う考え方のプランです。なぜそのようなプランを提供することになったのでしょうか。
廣井:先ほど、お客様の7割から8割は今の「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」でカバーできるというお話をさせていただきましたが、それは「統計的にそうだ」というだけで、そのなかに入らないお客様もいます。たとえば短い通話を1日に何度もされるようなお客様ですね。そういうお客様からは、「60分通話無料と言われてもちょっと躊躇する」という声がありました。
今、MNO各社が「5分以内の通話は何度でも無料」という料金プランを提供されています。そちらをお使いのお客様にも安心して我々のサービスを使っていただくには、慣れ親しんだ同プランの選択肢をご用意するのがよいだろうと考えました。それが、「おしゃべりプラン」だったわけです。
料金プランを「選べる」ようにすることで、よりご自分に合った、安心できるプランを見つけていただきやすくなれば、と思っています。
――提供開始は2017年2月22日と、少し先になってしまいますね。
廣井:ニーズがあることはわかったので「やります」と発表しました。でも実際にご提供するのに社内事情で来年の2月になってしまいました。そのため、サービスが開始されるまでのあいだは、「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」の無料通話を「3倍」に増量してご提供することで、少しでも「5分使い放題」に近いかたちで使っていただけるようにと考えました。
――今、「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」を契約すると、無料通話分数が3倍になり、「おしゃべりプラン」サービス開始後の3月からは、自動的に「おしゃべりプラン」に切り替わるのですね。同プランより「30分無料」の方がいい、という人はどうすればいいでしょうか。
廣井:我々としては「5分以内の国内通話が何度でも無料」のニーズが高いと考えていますので、なにもしなければ3月から「おしゃべりプラン」に自動移行します。ですが、しばらく使ってみて自分には「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」の方が合っていると思われたら、2月22日から28日までのあいだに手続きをしていただけば、そのまま3月以降も「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」でご利用いただけます※。
▼サービス切り替えについての説明図
※「無料通話3倍」は終了し、3月以降は「無料通話2倍」になります。
※3月1日以降でも、手続きいただいた翌月より「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」に変更できます。
「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」「おしゃべりプラン」は、毎月変更していただくこともできますから、実際に使ってみて自分に合ったプランを探していただければと思います。
――最後に、UQ PLANET読者の皆様にメッセージをお願いします。
廣井: UQ PLANETを通してお客様のいろいろなご意見を汲み取り、よりリーズナブルに、より多くのニーズにおこたえしていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
【クレジット】
文:板垣朝子
写真:稲田 平
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